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熊野幻想の解説(一部)

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「熊野幻想」は難解であるというご感想をよく戴きます。確かに僕の持てる知識を総動員して組み立てているので、普通に知識がある方でさえ五割理解できるのがせいぜいでしょう。そもそも文章ではないし。そこでこの場をお借りして、少々ご説明いたします。( )内は解説。


●海馬五郎と再会した橘若彦との丁々発止場面
 シーン11「社務所内」
    広い社務所内にポツンと置いてあるストーブ。
    (何故蝉が鳴いている山の中なのにストーブが出ているのか?高館山がただの霊山だというだけでなく、熊野の力によって自然が狂っていることを現しています。
    また主役の二人が見た目若いのも、同様です。もはや二人ともまともな人間ではありません。)

    それを取り囲むようにして座り、酒を飲む二人。
    (銘柄を見せているのはスポンサーカット。)
    くるくるとコップを回す五郎。(自分の運命を模している。)
    気泡が綺麗に上がっていく。(自ら湧き上がる気泡は、当然「人魚姫」のくだりを模しています。)
橘   「(写真を見せ)いわき市の館山六号横穴古墳(実存します)だ。
    この古代文字の“ア”(「ホツマツタヘ」参照)を輪状につなげることによって、永遠の命を現わすとされている。
    “岩のように長く生きろ”と言った磐長姫だな。(ここは、自説です。)
    そして“常陸風土記”では、この周辺を「苦麻之村」と記している。(事実です)苦しい麻の村、と書いてクマノだ。
    タテヤマ、クマノ、麻、渦巻文、そして永遠の命を唱った磐長姫。
    これらが指し示しているのがこの神社だ。(ここも自説ですが、すべて符合しています)-見ろよ。」
    室内にはいろんなこぎん刺しがある。その紋様が、すべて連続した“ア”である。
    (文様と古代文字の関係性については、門外漢ですが、資料を集めれば集めるだけ、その事実に近づけました。)
橘   「これはこぎん刺しと言って、麻布の補強に装飾性と呪的意味をもたせた、津軽地方の知恵と技の結晶品だ。」(事実です。)
五郎  「山中教授がよく言っていたな。
    君のその創意性は、縄文時代から引き継がれた青森人ならではの物だとね。
    森や雪で隔絶された地方だから、伝統や伝説が形を崩すことなく残されたのさ。
    外来の文化も、融合されずにそのまま残っている。 
    (この台詞は、自説「閉鎖された文化論」に基づいています。)これは雲南省南部のタイ族の菱形装飾で、
    こっちのさかさこぶはローマ数字の13そのままだ。そば角は、能装束でも見られる魔除けの紋だな。
    (手持ちの資料で、この台詞が生まれました。もっと調べればいろいろな事実が判明するはずです。)」


…ということで、ほとんどが現在残されている遺跡や旧文化などを元にして構成した僕の持論ですが、正直、全編この調子で物語りは進められています。
地元での上映会にて、質問攻めにされました。ひょっとすると映画向きではないかもしれません。舞台化の予定もあったのですが、体がついて行けません。


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ちなみにこの写真も、自然に対して張る結界=熊野幻想の世界観の象徴として使われました。


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